箱根での民泊・旅館業|観光地の宿泊需要は伸び続けるのか?

箱根は古くからの観光地で、現在も観光の人気スポットとなっており、インバウンドについても東京から近いため、多数の外国人観光客が訪れる関東屈指の観光スポットとなっています。

箱根は独自の保健所を持たず、旅館業の許可権限は神奈川県にあります。しかし、関東有数の観光地で国立公園内ということもあり、独特のルールが存在し、民泊(住宅宿泊事業)も含め、営業許可への道程は複雑です。今回は、箱根での旅館業開業について、手続きと、観光資源という2つの面からご紹介します。

箱根町

箱根町は ほぼ全域が、富士箱根伊豆国立公園内にあり、人口わずか1.1万人にも関わらず、年間延べ2千万人の観光客が訪れます。財政力指数は2006年の数値で1.62、2014年で1.44と驚異的な値です。

※財政力指数: 地方公共団体の財政力を示す指標として用いられる指数であり、基準財政収入額/基準財政需要額で計算し1.0を上回れば、その自治体の税収入等だけを財源として行政を遂行でき、下回ればできない。したがって、1.0を上回れば、地方交付税の不交付団体となる。

箱根町の1.62という数値は脅威的で、1.0を上回る自治体は、都道府県の中では、東京都のみ( 1.00321 (H27年度))、同年のデータでは20ある政令指定都市のでは、川崎市が唯一です(1.00(H27年度))

面積92.86K㎡
総人口11,169iy (2019.10.1推計)
人口密度120人/K㎡
財政力指数1.62(2006年)、1.44(2014年)

箱根の観光需要

箱根の観光需要については、現在インバウンドで人気のように見えますが、10年前から、さほど増加してはいません。

2020,677.000
観光客総数(人)対前年比対H20年比対前年増減比(人)
2119,649,000 95.0% 95.0% △1,028,000
2220,036,000102.0% 96.9%   387,000
2317,671,000 88.2% 85.5% △2,365,000
2419,438,000110.0% 94.0%  1,767,000
2520,857,000107.3%100.9%  1,419,000
2621,190,000101.6%102.5%   333,000
2717,376,000 82.0% 84.0% △3,814,000
2819,565,000112.6% 94.6%    2,189,000
2921,520,000110.0%104.1%  1,955,000
3021,260,000 98.8%102.8%  △260,000

箱根がにぎわっているように見えるのは、国内の観光客は横ばいであるものの、海外からの観光客が増加し、観光客が入れ替わっているからでしょう。

以下のデータは、各宿泊施設別の宿泊客のデータですが旅館ホテルの外国人の数が

平成21年112,688人➡平成30年585,169人と5倍以上に増加しています。※一般客数は横ばい、修学旅行客もほぼ横ばい、国民宿舎やペンションは大きく減少しています。以下、平成21年と平成30年の観光客の対比です(箱根町公表データより)

その他、箱根町が公表しているデータで重要なものを掲載しましたが、特筆すべき点は、市区泊客数はあまり変わらないのに対し、宿泊費が10年で2割程度伸びていることです。

因みに、上記(4)~(6)の合計が、H30年で860億円となり、箱根町は、人口僅か1.1万人ですから、いかにすごい数字かということが分かるかと思います。

許認可について

許認可は管轄が広範囲に分かれていて、神奈川知事の営業許可が必要で保健所関係申請手続き(旅館業法、住宅宿泊事業法、温泉利用許可、公衆浴場、飲食業など)は小田原の保健所( 小田原保健福祉事務所 )となります。

消防法の管轄は箱根町消防本部、景観条例の管轄は箱根町、水質汚濁防止法、建築基準法の管轄は神奈川県、国立公園なので、国(環境省)も関係があります。その他法務局は(横浜地方法務局 西湘二宮支局)と資料を収集するだけでもかなり大変です。

消防法は特に注意が必要。消防署は箱根町独自の条例がありますので、国や神奈川県の取扱いとは異なる場合がありますのでご注意ください。

以下主な申請を手続きごとに一覧にしましたので、ご活用ください。

管轄管轄法令、条例
旅館業、住宅宿泊事業神奈川県 小田原保険福祉事務所旅館業、住宅宿泊事業法
消防箱根消防本部消防法 同条例
景観条例箱根町箱根町景観条例・景観計画
温泉、公衆浴場関係
上下水道関係
入湯税
神奈川県 小田原保険福祉事務所
箱根町 上下水道温泉課
同上  税務課
温泉法、公衆浴場法
水道法
地方税法
浄化槽、排水関係神奈川県 小田原保険福祉事務所 水質汚濁防止法、浄化槽法
建築基準法、都市計画法(用途地域、開発許可)同上
箱根町  都市整備課
建築基準法
都市計画法
ごみ関係箱根町 環境課 廃棄物処理法
国立公園関係環境省  関東地方環境事務所 富士箱根伊豆国立公園管理事務所 自然公園法
登記関係法務局  横浜地方法務局 西湘二宮支局 不動産登記法

参考 箱根町公表資料( 建築・開発 窓口相談チェックシート http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/6,2448,c,html/2448/20190719-112329.pdf)のうち、旅館業、住宅宿泊事業に関係する重要なものを抜粋しました。

箱根町の用途地域

箱根町の用途地域は、都市計画区域として定められている地域のほとんどが、住居系の用途地域となっていて、別荘地は、第一種・第二種の低層住居専用地域が大半です。※無指定の地域も広範囲にあります。商業地域や近隣商業地域は、駅周辺などの限られた地域に限定されています。

一般的には、旅館業には厳しく見えますが、次のとおり、特例が設けられています。

箱根町の用途地域について、町役場までご確認ください。なお、簡易的に調べる場合は、こちらのサイトが便利です。

https://cityzone.mapexpert.net/ZoneMap?L=14382&N=%E7%AE%B1%E6%A0%B9%E7%94%BA

特別用途地区

用途地域内のある一定の地区において、特別用途地区が設定されています。特別用途地区とは、用途地域を補完して定める地区です。箱根町では、「観光地区」と「特別工業地区」を定めています。

第1種
観光地区
第一種低層住居 専用地域の全域規制専用住宅(一戸建て及び2戸以下の長屋)または別荘管理事務所を兼ねる併用住宅(住宅部分が2分の1でかつ事務所部分が50平米以内)以外は建てられない→ごく小規模の宿泊施設のみ
第2種
観光地区
第二種低層及び第一種中高層住居専用地域の一部緩和旅館・ホテルが建てられる
第3種
観光地区
第一種住居地域の一部緩和旅館・ホテルでその用途に供する部分(居住部分は除く)の延べ面積が3000平米を超えるものと旅館・ホテルで料理店(建築基準法別表第2(ち)項第二号に掲げるもの)を兼ねるものが建てられる
特別工業地区第一種住居地域の一部緩和箱根細工を営む工場で原動機を使用する作業場の床面積を150平米まで緩和する。 箱根細工を製造するための木材の引割り、もしくはかんな削り等で原動機の出力の合計を20キロワットまで緩和する


詳細については、関連リンク(箱根町都市計画特別用途地区建築条例)をご覧ください。

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