旅館業の申請は、保健所が窓口です。保健所は自治体の期間で、都道府県が緒かつで運営する場合と、政令市や特別区、中核市が運営する場合とがあります。申請の代理人には、通常行政書士がなりますが、今回は、行政書士報酬についてご紹介します。
また、設計、施工管理に係る建築士費用、申請時に係る行政手数料についても併せて解説します。
※動画で解説を聞きたい方はこちらをご覧ください
申請に係る費用
通常、行政書士が申請します(行政書士以外のコンサルタントや不動産業者などが業として有料で申請する場合は、法律違反となり罰せられる可能性があります)。また設計費用、用途変更(建築確認)などは建築士に依頼するのがよいと思います。なお士業の報酬は自由化されていますので、事務所により大幅に異なります。
行政書士費用
大体の相場は、旅館業や特区民泊で25万円~40万円くらい。民泊(住宅宿泊事業)で20万円前後です。地域、事務所、取り扱い実績によりまちまちですが、専門で旅館業・民泊申請業務を行う事務所は多くはありませんので、事務所の熟練度や取扱件数については、ホームページからはわからない場合が多いですが、特段熟練度によって料金にさがあるわけではありません。
旅館業の料金体系
※ここで当事務所料金表を参考に掲載します。
首都圏を中心に考えると、旅館業(民泊規模の小規模なものに限る。)の申請費用については、安めの設定で、20万円程度、高めの設定で40万円程度がボリュームゾーンです。
当事務所は、民泊制度開始(特区民泊条例制定2016年1月)から価格設定は変わっていませんが、当時は旅館業、特区民泊を扱う事務所が少なかったため、後発で民泊関連を扱うようになった事務所は、当事務所を含む先発事務所の料金を考慮して価格設定が行われたように考えられます。
行政書士の報酬は、自由化されていますので、料金体系は様々ですが、旅館業の場合、調査費、申請報酬、図面作成料など細かく報酬を提示している事務所もありますので、契約する場合、総額を確かめるようにしてください。
なお、旅館業の中では、かつては、簡易宿所と旅館、ホテルでかなり報酬金額の差がありましたが(これは、規模による差が大きいですが、現在は簡易宿所が小規模でホテルが大規模という区分けはなくなりました。)、現在は縮小傾向にあります。
住宅宿泊事業の料金体系
なお、2018年6月に新たに誕生した民泊「住宅宿泊事業」については、旅館業よりもやや安価な設定となっていて、概ね20万円前後が標準で、ボリュームゾーンは15万円~25万円程度でしょう(※当事務所は法施行の半年前より料金提示していましたので、こちらも一定の指標となつています。)
特区民泊の料金体系
特区民泊は、旅館業に比べてやや安い傾向にあります。平均価格としては、トータル20万円前後といったところでしょう。特区民泊の申請については、旅館業と比べて簡単であるわけではなく、むしろ余計な添付書類の作成など、 独特の要件、基準が多く旅館業の申請とは似て非なるものです。
(※特区民泊の報酬体系は、日本で初めて特区民泊業務を受任した当事務所の料金体系が参考にされています。)
行政書士に依頼する際のポイント
このように、行政書士報酬は自由化されていますが、報酬は各事務所とも、あまり違いはありません。
しかしながら、
・取扱件数や熟練度:これまでの取扱件数など
・図面作成等有無:CAD図面作成可能か、図面がない場合の対応可能か?
・工事業者や建築士との連携:信頼できる工事業者(内装、消防設備、構造)や建築士を紹介、連携可能か?用途変更(建築基準法に係る建築確認の申請・変更)に対応可能か等
・民泊業務代行業者との連携や紹介: 信頼できる民泊業務代行業者(住宅宿泊管理業者)や建築士を紹介、連携可能か?
・役所との調整:保健所、消防署、その他自治体の関連部署の状況に明るいか?
・コンサルティング可能か:そもそも、旅館業や民泊の業界やこれら和取り巻く状況についての知識等が豊富か?
など、事務所によって実際のサービスの内容やレベルはまちまちです。事務所ホームページからはこうした内容はわからない場合が多いので(1回しかやったことがない、又は1回も申請を行ったことがないにも関わらず、コンスタントに業務を行っているかのように見えるサイトも多くありますので、ご注意を!!)、直接話を聞くなど、この辺りは、よく確認して依頼先を決めましょう。
参考|申請には、どのような申請書類、添付書類が必要なのか?
旅館業の場合、平面図や立面図、配置図、求積図等の図面類などの添付が必要な自治体が多く、その他、自治体独自で様々な添付書類が必要です。
※以下、添付書類が非常に多いと言われる京都市の例です
偽行政書士に注意!! 行政書士でないものが報酬を得て旅館業の申請を行うことは違法です!!
旅館業や住宅宿泊事業でありがちですが、コンサルタントなどが報酬を得て保健所や消防署に申請を行っている場合がありますが、これらは、行政書士法に違反しています(罰則あり)。
行政書士法では、「行政書士でない者が、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することを業とすること(つまりビジネスとして申請代行を行う金銭を受領することです。)は行政書士法違反となり、刑事罰が科されることがあります」とされており、民泊ではよくありがちですが、当事者ではい、コンサルタント、民泊代行業者、又は工事業者などが申請を代理することはできません。
※行政書士法抜粋
また、行政書士試験に合格しただけで、行政書士会に登録をしていない者についても、同様に業務はできませんので、ご注意ください。
建築士費用
旅館業や民泊の申請については、工事や建築図面関連で建築士が介在することが多いのは事実です。特に旅館業については、建物自体が建築基準法上「特殊建築物」の取扱いとなりますので、リフォームや消防設備等の設置は、専門家である建築士(消防設備については、建築士に加え、消防設備士)の関与が不可欠です。
なお、建築士の報酬は自由化されていますが、図面作成、設計料、施工管理費などの建築士報酬については、規模、内容に応じまちまちです。例えば、新築の場合は、
施工費用×○○% などで計算されることが通常です。
例えば、新築施工費用1800万円の場合、報酬が15%であれば、18,000,000円×15%=2,7000,000円となります。ただし、中古リフォームなど単価化が低いものについては、パーセントではなく、金額のみの提示 設計料及び施工管理費800,000円などのようになる場合が多いと思います。
なお、用途変更など、業務量の膨大な業務の場合、新築の場合の設計料、施工管理費と同様の金額となるケースも多くあります。(一般的に、用途変更(建築確認の変更(200㎡超の転用))については、数百万円~という事務所が多く、100万円を切るようなケースは稀です。建築確認の有無(検査済証の有無)、増築、耐震性などにより価格は変わってきますが、一般的に、建築確認の検査済証書がない場合は、作業量や図面の復元工程が膨大になり、高額になる傾向にあります。)
行政手数料|自治体保健所に支払う旅館業申請手数料
最後に、旅館業や特区民泊の申請には、代理人である行政書士の報酬や建築士の報酬 以外に、申請時自治体に支払う手数料があります。
旅館業申請手数料
旅館業の申請に係る行政手数料は、都内の自治体で概ね16,500~30,600円くらいです。都内自治体では、簡易宿所よりも、旅館・ホテル営業が高い傾向にありますが、一律22,000円という自治体もあり、自治体によりまちまちです。手数料の金額については、自治体で手数料省令により定められています
※都内自治体の一例|台東区旅館業手数料の例
旅館・ホテル営業 | 1件につき 30,600円 |
簡易宿所営業 | 1件につき 16,500円 |
宿営業 | 1件につき 16,500円 |
特区民泊申請手数料
特区民泊については、以下の自治体で実施されています。
各自治体により、多少金額器異なりますが、以下のとおりです(2019.10.30現在)
東京都 大田区 | 1件につき 20,500円 |
大阪府 | 1件につき 21,200円 |
北九州市 | 1件につき 21,200円 |
新潟市 | 1件につき 21,200円 |
千葉市 | 1件につき 22,100円 |
以上、申請に係る費用(行政書士費用、建築士費用、行政手数料)を解説しましたが、次回は「 内装や設備にかかる費用 」を解説します。