今回は、民泊概論を説明する前提として日本の宿泊、観光マーケットについて概要を解説いたします。ポイントを絞って説明しますので、今後の戦略を立てるうえで、マーケットの概要の把握するための資料とし活用してください。
※今回の記事は、2019.12現在における最新の資料(主に2018年末データ)を元にしています。これまで当サイトで掲載したデータは2016年現在の統計データが多いので、今回アップデートのため記事にいたしました。
日本のインバウンド需要
日本の貿易収支に占める、インバウンド需要は、年々増加しています。外貨を稼ぐうえで、今や日本の期間産業の1つともなった観光事業ですが、安倍政権発足以来、国策として観光事業、特にインバウンドを狙った外国人旅行者をターゲットにした観光事業に力を入れています。
民間のビジネスとしては、成長分野として参入者が増加していますが、特区法によるのスタートを皮切りに、旅館業法の緩和、住宅宿泊事業法(民泊新法)の制定など、他の政策の進捗に比べ、桁違いのスピード感で政策が実現され、政府が強力に後押ししていることが伺えます。
日本のインバウンド需要に対する国の政策
アベノミクスの経済政策の1つとして、観光需要の拡大がありますが、具体的に政策としは、それまでの政権の成果を示した上で、 「明日の日本を支える観光ビジョン」-世界が訪れたくなる日本へ- と題し、平成28年3月30日に直近の政府目標として、2020年までに訪日外国人数を4000万人、さらに10年後の2030年までに6000万人を目標に提示されています。
訪日観光客数の推移
下の表は、2003年から直近の2018年までの訪日観光客数の伸びをグラフ化したものです。
特に減制限が発足した2012年から飛躍的に伸びていて、7年で4倍近くに増加しています。
暦年 | 訪日観光客数(単位万人) |
2003 | 521 |
2004 | 614 |
2005 | 673 |
2006 | 733 |
2007 | 835 |
2008 | 835 |
2009 | 679 |
2010 | 861 |
2011 | 622 |
2012 | 836 |
2013 | 1036 |
2014 | 1341 |
2015 | 1974 |
2016 | 2404 |
2017 | 2869 |
2018 | 3119 |
2019 | 1月-11月累計2935 |
訪日観光客数の政府目標
以下、 「明日の日本を支える観光ビジョン」 と題し、 明日の日本を支える観光ビジョン構想会議 が発表している者が最新の政府の方針です。一応、次のような3つの視点から、観光事業に対する方針を策定されていますが、詳しくは観光庁のリンクをご覧ください。
- 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に
- 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に
- すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に
https://www.mlit.go.jp/kankocho/topics01_000205.html
ポイントとしては、観光客数や消費額の数値目標であり、直近では、2020年の目標値が掲げられています。
2018年月現在の参考数値としては、次のとおりです。数値目標はクリアできてはいませんが、2020問はオリンピツクイヤーということもあり、数値目標達成の可能性は十分に現実的なものであるといえます。(出典:観光庁統計より)
訪日外国人数 | 3119万人 |
訪日外国人旅行消費額 | 4兆5,189億円 |
地方部での外国人延宿泊者数 | 3636万人泊 |
日本人国内旅行消費額 | 20兆4,834億円 |
観光地
観光地別のデータですが、以下のように1位の東京都が突出しています。2の大阪、4位の千葉県など大都市圏が多い傾向にありますが、注目すべき点は、北海道、沖縄、静岡などの従来の観光資源を有する件が上位に食い込んでいて、昔からの観光にかかるインフラをうまく利用し、観光客数を伸ばしているのではないでしょうか?
次に、下位を見てみると、徳島、奈良、佐賀、島根、高知などですが、これらの件に観光資源が全くないわけではないのですが、観光客そのものみのが少ないことも考えられますが、近県に宿泊し、日帰りで観光していることも考えられます(徳島と兵庫のデータ参照)。したがって、統計上下位の県には逆に伸びしろがあるともいえるでしょう。
国籍別の人気観光客の動向
国籍別の傾向も多少あります。東京が人気ということは変わりがありませんが、韓国人、中国人は大阪、北海道が人気で、欧米系は、これらよりも京都を好む傾向があり、これは数年前から変わっていません。
ホテル稼働率
ホテルの稼働率については、近年増加傾向にあります。下表を見ると横ばいのようにも見えますが、平成23年のデータは、全体で51.8、旅館34.1、リゾートホテル45.8、ビジネスホテル62.3、シティホテル67.1でしたので、1割程度伸びていることが分かります。
なお、ホテルの数も増加していますので、特に都市部のホテルは不足傾向にあります。
ホテル不足と民泊
ホテルの数については、以下のようになっています。平成30年末の宿泊施設数は、全体:82,150施設(平成30年3月現在 厚生労働省「衛生行政報告例」、ホテル:10,402(客室数907,500)、旅館:38,622(客室数688,342)、簡易宿所:32,451、下宿:675 となっています。
主な観光重要としては、旅館、ホテル、簡易宿所ですが、旅館は全国的には減少傾向にあり近年は横ばいですが、ホテルは微増、簡易宿所は増加傾向にあり、全体でも、年間2000件超の伸びを見せています。
都道府県別では、ホテルが多いのは観光地である熱海などを有する静岡県、次いで観光重要の大きい北海道、スキーなどのリゾート需要の長野となっていますが、客室数は、東京が突出しています。
これらは全て政府発表データですが、宿泊ビジネスを行う上で非常に重要な統計データですので、以下のリンク先をご覧ください。
https://www.mlit.go.jp/common/001271444.pdf
民泊の躍進
さて、ホテル不足を補完する形で、2018.6月の住宅宿泊事業法の施行以来、飛躍的に民泊(住宅宿泊事業)の届出住宅数が伸びています。
約1.8万件届出住宅が存在し、今後も増加するものとみられます。東京オリンピック(2020.7.24~)には、ホテル建設では間に合わない可能性がありますので、とりあえず宿泊事業を始めいたという方は、住宅宿泊事業でスタートするのもよいと思います。
http://fujino-gyosei.jp/jyuutakusyukuhakujigyou-kensuu-suii/
以上、今回は、最新データの重要なポイントを掲載しました。今後、宿泊ビジネスに参入される方、又は現在、民泊・旅館業を展開されている方は、時々、データを振り返り、現状を把握することが重要であり、今回は、その一助となればと考え掲載しました。
筆者コメント:上記の都道府県別の述べ宿泊者数のデータがとくに重要で、特に、宿泊施設の少ない、統計上は下位の地域が重要だと思います。当サイトでも地方都市の調査を行っていますので、ご活用ください。