【2027年4月施行予定】中野区の民泊・旅館業が大きく変わります|条例改正案のポイントを区の公表資料から解説

中野区で民泊(住宅宿泊事業)や旅館業を検討されている方、すでに運営されている方に、必ず押さえていただきたい動きがありますが、中野区は現在、「中野区住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例」と「中野区旅館業法施行条例」の改正を進めており、令和9年(2027年)4月の施行が予定されています。令和8年(2026年)7月21日から8月11日まではパブリック・コメント手続も実施され、改正案の骨格はすでに公表されています。

中野区はこれまで、他区と比べて上乗せ規制が比較的緩やかで、参入しやすいエリアと言われてきましたが、今回の改正は、その前提を大きく変える内容です。

この記事では、区が公表している資料に基づいて、何が、誰に、いつから適用されるのかを整理いたしました。とりわけ「既存事業者にも適用されるのか」という点は、事項ごとに扱いが分かれており、誤解が多い部分です。

この記事のポイント!!

  • 住宅宿泊事業:制限区域に第一種住居地域・第二種住居地域・準工業地域が追加され、制限区域内は家主同居型のみ届出可能に
  • 旅館業:営業従事者の常駐が義務化
  • 上記2点は既存事業者には遡及適用されません
  • 一方、廃棄物処理業者との契約書等の提出は既存事業者にも遡及適用されます
  • 施行は令和9年4月。条例案は令和8年10月の第3回定例会に提案予定

1 なぜ今、中野区で民泊・旅館業の規制が強化されるのか

背景にあるのは、宿泊施設の急増とそれに伴う苦情の増加です。

平成30年の旅館業法改正で構造設備基準が大幅に緩和され、同時に住宅宿泊事業法が施行されたことで、区内の宿泊施設は急速に増えました。令和8年1月31日時点で、住宅宿泊事業の届出住宅は395件、旅館業の許可施設は281件にのぼります。

施設数の増加と並行して、苦情も増えています。同時点で区の生活衛生課に寄せられた苦情件数は、住宅宿泊事業が231件、旅館業が208件です。

苦情の中身にも特徴があります。

  • 住宅宿泊事業:ごみ、宿泊者による騒音、そして制限区域内での平日宿泊に関するもの
  • 旅館業:ごみ、騒音、標識の掲示に関するもの

住宅宿泊事業について「制限区域内での平日宿泊」の苦情が多い点は、今回の制限区域拡大の直接の背景にあたるものとして注目に値します。

区は「全国でも有数の人口密度の高い地域」であるとし、住宅密集地における生活環境の悪化と住民の不安を課題として挙げています。そのうえで、宿泊事業の適正な運営と良好な生活環境の確保を目的に、両条例の規制強化に踏み切りました。


2 中野区条例施行までのスケジュール

中野区が示している予定は次のとおりです。

時期内容
令和8年3月10日厚生委員会において両条例の「改正の考え方」を報告
令和8年4月区民意見交換会(4月15日・18日、中野区役所)。WEBフォーム等による意見募集も実施
令和8年7月条例改正(案)に盛り込むべき事項の決定/厚生委員会への報告/パブリック・コメント手続の実施(意見提出期間:7月21日~8月11日必着)
令和8年10月第3回定例会に条例改正(案)を提案
令和9年4月改正条例の施行

2028.8現在:この記事の執筆時点(令和8年8月)は、パブリック・コメントの意見提出期間が終了し、区が意見を整理したうえで10月の議案提出に向けた最終的なとりまとめを行っている段階です。

なお、パブリック・コメントの結果はこちらhttps://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kenko_hukushi/pet-eisei/kankyoueisei/ryokan-syukuhaku/zyuutakusyukuhaku_ryokanngyou.files/ikennkoukannkaizittsihooukousyo.pdf


3 中野区の住宅宿泊事業(民泊)の条例はこう変わります

(1) 制限区域が大幅に広がります

現行ルールの確認

区は現行条例で住居専用地域を「制限区域」とし、制限区域内では月曜日の正午から金曜日の正午までは住宅宿泊事業を実施できないこととしています。ただし例外があり、区で定めた許可要件を満たす家主同居型の形態であれば、その期間も事業を実施できます

ここに、どう手が入るのかですが、

中野区は、制限区域外である住居地域準工業地域にも住居が密集しているとして、静謐な生活環境を守るため、これらの地域も制限区域に加えます。

追加される用途地域は次の3つです。

  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準工業地域

さらに、制限区域内においては、家主同居型の許可要件を満たすもののみ届出可能とされます。

(2) ここが誤解されやすいポイント

この改正は「平日営業の禁止」と「家主同居型の必須化」という2つの規制が並んで課される、と読まれがちですが、正確ではありません。実際は原則と例外の関係です。

整理すると、こうなります。

  • 家主不在型(管理を外部委託する無人運営型)は、制限区域内で新規の届出そのものができなくなる
  • 家主同居型で許可要件を満たす場合は、制限区域内でも曜日の制限を受けずに事業を実施できる

つまり「平日営業が一律に禁止される」のではなく、「家主同居型でなければ制限区域内で新規参入できない」というのが実態に即した理解です。投資目的で家主不在型の運営を計画されている場合、対象エリアの見直しが必要になります。

用語:「許可要件」は区の資料上の表現です。住宅宿泊事業法上の制度は届出制であり、ここでいう許可要件は、平日も事業を実施できる家主同居型として区の確認を受けるための要件を指します。

(3) 既存事業者への適用は?

**この規制は、既存施設の事業者には遡及適用されません。**すでに届出をして運営されている家主不在型の物件が、施行によって直ちに営業できなくなるわけではありません。

(4) 事業系廃棄物の契約書提出が義務化されます

住宅宿泊事業で生じるごみは、事業系廃棄物として処理する必要があります。適切な処理の手続きがなされているかを確認するため、廃棄物処理業者との契約書等の写し等の提出が義務付けられます。

※こちらは既存施設の事業者にも遡及して適用されます。すでに運営中の方も、契約関係の整備と書類の準備が必要です。

(5) 違反施設の公表制度

区民の安全確保のため広く周知する必要があると認める場合に、違反施設の公表を行うことができる旨が規定されます。区は、これにより違反行為の抑止効果も一定程度あると考えています。

公表の対象範囲や公表する内容(施設名・違反内容の別など)の具体は、現時点の公表資料では特定されていません。


4 中野区の旅館業の条例はこう変わります

(1) 営業従事者の常駐が義務化されます

今回の旅館業側の改正で最も影響が大きいのが、この点です。

区は、生活環境の悪化を防止するには「近隣住民からの苦情があってから営業従事者が対応するのではなく、未然に防止することが必要」とし、また災害時や緊急時により迅速な対応ができるようにするためにも必要であるとして、施設への営業従事者の常駐を義務付けます。

周辺住民の生活環境悪化の原因に対し、迅速な対応を可能とする体制を確保する、という趣旨です。

**この規制も、既存施設の営業者には遡及適用されません。**すでに許可を受けて営業している施設が、この常駐義務のために体制変更を迫られることはありません。

一方、これから新規に許可を取得する場合は、人件費を含む運営体制を前提とした事業計画が必要になります。無人運営を想定した収支計画は成り立たなくなる可能性が高く、この点は早めの見直しをおすすめします。

(2) 事業系廃棄物に関する2つの規定

旅館業側では、廃棄物について2つの規定が設けられます。

① 廃棄物処理業者との契約書等の写し等の提出 旅館業で生じるごみも事業系廃棄物として処理する必要があるため、適切な処理の手続きがなされているかを確認する趣旨です。この規制は既存施設の営業者にも遡及して適用されます。

② 事業系廃棄物の保管庫での管理 旅館業は住宅宿泊事業と異なり営業日数の制限がなく、多くの廃棄物が想定されます。廃棄物を収集日まで衛生的に保管するため、必要に応じて保管庫で管理する旨の規定が設けられます。

ここは正確に読む必要があります。「必要に応じて」管理する旨の規定であり、すべての施設に一律に保管庫の設置を義務付けるものとは資料上読み取れません。適用の具体的な基準は、今後の条例・規則の条文で確認する必要があります。

(3) 違反施設の公表制度

住宅宿泊事業条例と同様、区民の安全確保のため広く周知する必要があると認める場合に、違反施設の公表を行うことができる旨が規定されます。


5 【重要】既存事業者に適用されるもの/されないもの

今回の改正案は、事項ごとに既存事業者への遡及適用の有無が明確に書き分けられています。ここを取り違えると、必要のない対応に追われたり、逆に必要な対応を見落としたりすることになります。

対象条例改正事項既存事業者への遡及適用出典上の記載
住宅宿泊事業制限区域の拡大/制限区域内は家主同居型のみ届出可適用しない明記あり
住宅宿泊事業廃棄物処理業者との契約書等の写しの提出適用する明記あり
住宅宿泊事業違反者の公表記載なし
旅館業営業従事者(管理人等)の常駐適用しない明記あり
旅館業廃棄物処理業者との契約書等の写しの提出適用する明記あり
旅館業事業系廃棄物の保管庫での管理記載なし
旅館業違反者の公表記載なし

要点は、「参入要件に関わる規制(制限区域・常駐)は既存事業者に及ばず、廃棄物の適正処理に関する規制は既存事業者にも及ぶ」という切り分けです。

なお、前回改正(令和3年4月1日施行)では、既存の許可施設について令和3年6月30日までの経過措置が設けられていました。今回の改正における経過措置の有無・内容は、現時点の公表資料では確認できません。


6 事業への影響と、今から準備できること

これから参入を検討される方へ

ハードルは大きく上がります。

住宅宿泊事業では、第一種住居地域・第二種住居地域・準工業地域が制限区域に加わることで、家主不在型の新規届出が可能なエリアが大きく縮小します。物件取得を検討中であれば、用途地域の確認は最優先事項です。

旅館業では、営業従事者の常駐が前提となるため、人件費を含む運営体制を織り込んだ事業計画が必要になります。

いずれも、令和9年4月の施行を前提に計画を組み立てるべき段階に入っています。現行ルールでの届出・許可取得を目指す場合、施行前のスケジュールは相当タイトです。

すでに運営されている方へ

制限区域の拡大および常駐義務は遡及適用されないため、直ちに営業形態の変更を求められるものではありません

ただし、廃棄物処理業者との契約書等の提出は既存事業者にも適用されます。契約関係の整備と書類の準備は、今のうちから進めておくことをおすすめします。

地域住民の方にとって

責任者の所在が明確になり、トラブル発生時に迅速な対応が取られる体制の整備が期待されます。

今後の確認事項

以下の点は現時点で確定しておらず、続報を待つ必要があります。

  • 令和8年10月の第3回定例会に提案される条例改正案の条文(公表案の「考え方」がどのような条文に落とし込まれるか)
  • パブリック・コメントの結果および区の考え方の公表内容
  • 制限区域内で認められる「家主同居型の許可要件」の具体的内容(居住実態の判定基準など)
  • 旅館業における「常駐」の定義(常駐すべき時間帯、対象施設の範囲、代替措置の可否)
  • 施行時の経過措置の有無および届出・許可申請の受付時期との関係
  • 規制強化に伴う無届施設への監視・指導体制の強化策

当事務所では、これらの動きを継続的に追跡しています。続報が出次第、本ブログで更新いたします。


7 よくある誤解と、正しい理解

※当事務所で調査したところ、ネット上の記事やAI要約では、以下のような誤りが見られます。実務判断に直結する部分ですので、あらためて整理します。

誤解1:旅館業の常駐義務は、既存の施設にも遡って適用される?→ 誤りです。区の資料には「当該規制は既存施設の営業者には遡及適用しません」と明記されています。住宅宿泊事業の制限区域拡大についても同様です。

誤解2:廃棄物に関する規制も、既存事業者には及ばない誤りです。**廃棄物処理業者との契約書等の提出は、住宅宿泊事業・旅館業ともに「既存施設の事業者(営業者)にも遡及して適用します」とされています。遡及適用の有無は、規制の性質によって切り分けられています。

誤解3:制限区域では平日営業が全面禁止され、かつ家主同居型が必須になる正確ではありません。両者は原則と例外の関係です。制限区域内で届出できるのは家主同居型のみとなり、その家主同居型は曜日の制限を受けずに営業できます。正しくは「家主不在型は制限区域内で新規届出そのものができなくなる」という理解です。

誤解4:旅館業の改正はごみ保管庫の設置義務が中心 → 不正確です。旅館業側の廃棄物に関する規定は、①契約書等の提出義務 と ②必要に応じた保管庫での管理 の2点です。保管庫は「必要に応じて」であり、一律の設置義務ではありません。

誤解5:悪質な違反施設は施設名と違反内容が公表される → 資料上はそこまでは書かれていません。規定されるのは「区民の安全確保のため広く周知する必要があると認める場合に、違反施設の公表を行うことができる」という内容にとどまります。

※2026.8.16現在調べによります。


お問い合わせ

当事務所では、旅館業許可の取得、住宅宿泊事業の届出、および条例改正への対応についてご相談を承っております。

物件の用途地域の確認から、運営体制の設計、必要書類の準備まで、事業計画の段階からご相談いただけます。今回の改正は、物件取得の前に確認しておくべき事項が多く含まれます。中野区での開業をご検討中の方は、お早めにご連絡ください。

旅館業許可・民泊届出その他ご相談は、下記フォームよりお気軽にどうぞ。


お問合せはこちら メールメアドレスinfo@fujino-gyosei.com

巻末:出典および留意事項

出典

本記事の記述は、中野区が公表している以下の資料を一次情報として整理したものです。区の資料に記載のない事項については、その旨を本文中に明示しています。

  1. 中野区厚生委員会資料「『中野区住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例』及び『中野区旅館業法施行条例』の改正の考え方について」(令和8年3月10日、健康福祉部生活衛生課)
  2. 中野区「『中野区住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例』及び『中野区旅館業法施行条例』の改正案に盛り込むべき主な事項について」(パブリック・コメント公表案。意見提出期間:令和8年7月21日~8月11日)
  3. 中野区ホームページ「『中野区住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例』及び『中野区旅館業法施行条例』の改正の考え方についての意見交換会、意見募集等」(令和8年4月)
  4. 中野区ホームページ「同 パブリック・コメント手続を実施します」(令和8年7月)

出典の突合について

パブリック・コメント公表案(出典2)の各条項は、令和8年3月10日厚生委員会資料の別紙「改正の考え方」(出典1)と実質的に同一の文言です。意見交換会を経ても、改正事項の内容および遡及適用の切り分けに変更はありません。したがって本記事の第3章・第4章の記述は、公表案の文言に一致します。

なお、公表案は改正事項のみを記載しており、施設数・苦情件数(第1章)およびスケジュール(第2章)は公表案には含まれていないため、これらは出典1を典拠としています。

留意事項

  • 本記事は令和8年(2026年)8月時点の公表資料に基づく情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の公表資料をご確認いただくか、専門家にご相談ください。
  • 令和8年10月の第3回定例会に提案される条例改正案の条文、およびパブリック・コメントの実施結果(区の考え方)は、本記事執筆時点では未公表です。「常駐」の定義や「家主同居型の許可要件」など運用の細部は、条例・規則の条文で確定します。
  • 苦情件数について「東京23区内で〇番目に多い」といった他区との比較を示す記述が一部で見られますが、区の公表資料では確認できません。比較を行う場合は、各区の公表値と集計基準(施設数・件数の別、集計期間)を確認する必要があります。

※2026.8.16現在調べによります。

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