【民泊概論】民泊参入者のための基礎知識2|建物別の転用コスト(前編(旅館業法・消防))

別シリーズで民泊・旅館業にかかるイニシャルコストやランニングコストについて「民泊コスト7選」ということでシリーズでご紹介しましたが、宿泊ビジネスをスタートする上で、最大の経費は、消防設備・防火区画等の防災工事費用と、旅館業法に基づく設備の設置費用です。

もっとも、不動産を購入したり、建築したりする場合は、不動産の取得費の方が大きいですが、これは別でご紹介します。

今回は、

・旅館業法に関する設備の要件とコスト

・消防法に関係する設備の要件とコスト(防火区画工事などの建築基準法に基づく工事は除きます)

について解説します。

住宅宿泊事業(民泊新法)、特区民泊、旅館業の建物の違い

宿泊事業を規定する法律については、宿泊関係3法として前回解説しましたが、3つの法律により取扱いが異なります。

これらの法律についてですが、簡単に言うと、

・住宅宿泊事業や特区民泊は住宅を転用することを想定し、設備などの要件も、通常の住宅に設置されているような水回りの設備で概ね可能です。

・一方、旅館業法については、小規模な民泊レベルのものであっても、巨大なホテルであっても、同じ規定(条例)が適用されますので、小規模ホテルでも、一定の設備要件が課せられています。

旅館業特有の設備要件

水回り設備(トイレ、洗面所)の個数要件(最低要件)が存在する

旧法での取り扱い改正後の取扱い
トイレ➡最低個数の規定あり、多くの自治体は5名につき2個の便器などの基準(旧衛生管理要領の基準)を採用していました。

多くは、
トイレ➡5人につき2個
洗面所➡5人につき1個
浴室➡男女別1個ずつ、浴槽必要
等の基準が一般的でした。
改正後は、基準が緩和される傾向にある。多くの自治体で、客室内にトイレや洗面台がある場合は、個数要件は適用しないこととしている。➡定量的な基準(○個/5人必要など)の記載はなくなりました。

※共用トイレ、洗面所の場合は、個数要件の規定や指導あり。また、自治体独自の要件あり。

東京都台東区、中央区、千代田区、墨田区などの特定の自治体には、一定の個数要件が条例、規則、指導要綱、ガイドライン中に現存していますので注意してください。

●中央区の現行規定(2019.12.17現在)の抜粋です。参考

東京都中央区の許可基準(ホームページ掲載)から抜粋

フロント(玄関帳場)の要件

原則としてICT機器で可能になり、フロントの設置や規格などの要件は、法令や国のガイドラインからは削除されました。

旧法での取り扱い改正後の取扱い
・旅館、ホテルにはフロントが必要
・簡易宿所は要件なし
全ての営業においてフロントの要件はICT機器や監視カメラ等で代替可能

ただし、実際の保健所を設置している自治体レベルでは、フロント要件が現存したり、代替手段が可能であっても、国の提示しているよう県よりも厳しい自治体も多く、各所で運用が異なります。

●中央区の現行規定(2019.12.17現在)の抜粋です。参考

東京都中央区の許可基準(ホームページ掲載)から抜粋

その他、浴室の有無についても、自治体により異なります。

まとめ

住宅宿泊事業、特区民泊➡原則として、住宅からそのまま転用可(トイレ、洗面、キッチン、風呂(シャワー))は、1つあればよい。

旅館業の設備費用:1室のみの旅館ホテル営業や戸建てを1グループで利用するような施設については、旅館業法に基づく設備の設置費用はかからない場合あり。ただし、水回りの追加についてはトイレ1つで50万円~設備投資が必要です。

消防法の規制

基本的には、50㎡未満の家主居住型の住宅宿泊事業を除き消防法令に関しては、ホテル旅館の規制が適用されます。

具体的には消防法施行令別表5項(イ)(複合建物の場合は16項(イ))の規定を適用し、取扱いについても、旅館業、住宅宿泊事業、特区民泊共に同様です(一部例外あり)。

消防法別表第一

5項イ  旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの

16号イ 複合用途防火対象物のうち、その一部が(一)項から(四)項まで、
(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの

消防法の取扱いまとめ

●住宅宿泊事業(家主居住、宿泊室50㎡以下)➡通常の住宅と同様 ※5項ロ、16項ロ等を適用

●旅館業、特区民泊、家主不在型の住宅宿泊事業➡5項イ、16項イの規定が適用、旅館業法以外の営業であっても、消防法令上は旅館やホテルと同じものとして取り扱われます。

自動火災報知設備

消防法に基づく設備の設置については、

  • 自動火災報知設備
  • 誘導灯、誘導標識
  • 避難器具(緩降機、避難梯子など)
  • 消火器
  • 火災警報器、漏電警報器

など様々な設備の設置が必要になりまいが、この中でコストが最大のものは、通常は【自動火災報知設備】です。

自動火災報知設備については、原則として、上記5項イ、16項イが適用される旅館ホテルには設置が義務付けられていますが、小規模施設用の簡易的な設備【特定小規模用自動火災報知設備】の設置が可能な場合があります。

特定小規模施設とは、原則として300㎡以下の建物なのですが、以下のような取り扱いとなり、津のあたりがとても質問が多いので、ポイントを掲載します。

構造自動火災報知設備の設置備考
2階建(木造、RC、鉄骨など)通常2階建てまでは特段の規制はありません
3階建 (木造、RC、鉄骨など) ×通常の有線の自動火災報知設備の設置が必要。
例外的に、外気に開放されている階段や2系統の階段(非常階段)がある場合、特定小規模用自動火災報知設備の設置が可能
3階建て以上の建築物で延べ床面積が500㎡超東京都を例にすると、通常は、大型の建物の場合、共同住宅などであっても自動火災報知設備の設置義務があり、建築当初から設置されている場合が多い。
何らかの理由で設置がない場合は、建物面積の1/10以下であれば、原則として、該当箇所のみ特定小規模用自動火災報知設備を設置すればよい(1/10を超えると建物全体に設置)

3階建て以上の場合は、特定小規模施設の要件(~300㎡)であっても、適合しない可能性が高いので注意 特定小規模施設用の防災であれば数十万円くらい、通常の自動火災法と設備であれば百数十万円~300万円程度想定して下さい。

自火報についての詳細は、こちらのページで確認して下さい。

http://fujino-gyosei.jp/jikahou-matome/

※後編へ続きます。後編では、建物別のコスト比較を詳しく解説します。

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