手抜きマンション(第1回) 鉄筋切断マンション建て替え

鉄筋切断マンション

横浜の鉄筋切断マンションが正式に立替するとの会見がありました。住民の方は、2年越しの悲願が成就し、一安心というところでしょうか。
さて、最近相次いで、手抜き工事のマンションが話題になっていますが、何回かに分けて手抜きマンションについてお話していきたいと思います。
さて、問題のマンションですが、工事中に誤って鉄筋を切断してしまったということなのですが、これは、マンションにとっては致命的なダメージを与えることになります。

鉄筋コンクリートの構造

ここでマンションの構造について解説したいと思いますが、マンションはコンクリートでできた建物なのですが、例外なく、鉄筋、もしくは鉄骨の「骨組み」が入っています。これはなぜかというと、コンクリートが「硬い」からです。
https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/PP_tekkotutohonegumi_TP_V.jpg
?硬ければ、鉄の芯などいらないような気がしますが、これには訳があります。コンクリートはその硬さゆえに、圧縮力(押し付ける力)にはものすごい強度を発揮しますが、曲げや、引張力、せん断力に対しては意外ともろいのです。※硬いものは、割れないかというとそうでもなく、例えばダイヤモンドでもハンマーで割ろうと思えば割れますね。
だいたい、コンクリートは、圧縮力の10/1くらいしか引っ張りに対する強度がないといわれています。
これを補うために、「鉄筋」などの鉄の芯をコンクリート内に入れて、強度を補っているのです。なにしろ鉄は柔軟性があるので、引っ張り、せん断の力等には割と強いのです(構造力学で言う断面力のすべてに強いというわけではありませんが、特に引っ張りに強いく、圧縮には弱いです)。したがって、鉄とコンクリートの両方の長所を組み合わせたのが、鉄筋コンクリートの建物なのです。仕組みは単純で、コンクリートの欠点である引っ張りに対する力を鉄筋が保管するということですね。なお、太い鉄骨であれば、それだけでも地震に耐えることはできますが、熱に弱いので、火事になると溶け落ちてしまいます。なので鉄筋コンクリートが、ビルを作るのには最適なのです。

鉄筋コンクリートの耐震性

鉄筋コンクリートは、きちんと施工していれば、東日本大震災にも都心の古いマンションは揺れながら耐えましたので、新耐震基準となった昭和56年以降の新耐震基準の建物は、震度5強程度ではびくともしないはずです。皮肉なことに、東日本大震災で証明されましたね。
ただ、問題のマンションは、肝心の鉄筋が切断されていますから、人間で言えば、骨折しているようなもので、大きな地震が来たら簡単に倒壊して今うと思います。よく、海外の地震で倒壊した建物の断面を見ると、恐ろしいほど鉄筋が少ない建物を目にしたりしますが(そもそも地震を想定しない国では日本のような耐震基準などないと思いますが)、鉄筋切断により鉄筋が機能しなくなりますので、同じような状態になると予想されますね。
鉄筋を切断などは、通常は考えられないようなミスですが、この物件が氷山の一角でないことを祈ります。
折角なので、次回以降は、基礎(杭)や耐震偽装について振り返ってみたいと思います。

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