民泊新法前倒し? 民泊サービスのあり方に関する検討会最終報告書 

6月20日のあり方検討会の原案を微修正し、「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書が公開されました。

全文はこちら→厚生労働省ホームページ  PDF (PDF:224KB)

そして、通常国会を待たずに、秋の臨時国会での法案提出という報道もありましたから、前倒しの可能性も高くなってきました。

施行まで前倒しとなるのかはわかりませんが、

①政府の指示どおり、6月には閣議決定、あり方検討会も既に結論を出していること

②この法律には特段の新たな国家予が不要であること

を考えれば、現在は法整備へのテクニカル的な手続きを行う段階となっていますから、秋の国会での法案提出、制定も十分考えられるのではないかと思います。

 民泊新法と周辺法規の制定手続き

実務的な面から考えると、こうした大型の法律は、制定されただけでは機能しません。

通常、国レベルでは法律の細則として、

●施行令(政令)、●施行規則などの細則を制定し、細かい運用方針、基準を決め、面に必要な応じて、法令の行間を埋めるガイドラインやQ&A、手引きなどを策定されます。

そして、新法の内容が、細かい部分を地方自治体の条例レベルに委任するのかはわかりませんが、旅館業法も同時に改正されますから、条例改正が行われるのは、ほぼ間違いないと思います。そうなると、制度の準備を担う行政側としては、なるべく早い法律制定が歓迎されると思います。

民泊新法に関連した自治体の動き(京都市)

あり方検討会の報告書が決定したタイミングで、京都市(門川京都市長)から、要望書が提出されています。

要望書の内容は、民泊新法について、自治体に裁量権を認めるよう求めたもので、具体的には、新法での、住居専用地域についての民泊実施の要否についての自治体裁量のみならず、民泊全般について自治体に裁量権を求める内容となっています。

閣議決定やあり方検討会では、自治体の役割は、あくまで、「住居専用地域において新法で定義する民泊を認めるか否か」という限られた裁量のみが明文化されています。

しかし、本来これは、都市計画法、建築基準法においても、自治体に具備されている権限であり、地元の行政を担う地方自治体としては、旅館業法同様、民泊に関する包括的な権限がないと不十分であるという趣旨です。

以下、要望書全文です。

新法民泊について、政府はインターネットと民間の力を活用したいようですが、最終的に地元自治体(都道府県(特別区、政令市))に管轄権、裁量権がなければ、事実上野放しというか、制度が機能不全になるようなことも予想されますから、京都市の要望内容は、地元自治体として至極もっともだと言わざるを得ません。

民泊新法整備の効用はむしろホテル・旅館にあり?

新法制定により、関連法として、旅館業法や場合によっては国家戦略特別区域法も改正される可能性があります。

特に、旅館業法の改正は確実であり、①ホテル営業と旅館営業の一本化②宿泊拒否(禁止)規定(旅館業法5条)の廃止または緩和を行うことが現在のところ濃厚です。

ここで、重要なのが②の宿泊拒否規定で、日本のホテル・旅館業は、原則としてお客から宿泊の申し込みがあれば、伝染病や違法行為など明らかに合理的な理由がある場合を除いて、空き室がある限りは宿泊させなければならない義務を負っています。まさにお客様は神様なわけですが、今回、民泊新法との調整で、この規定がなくなる可能性が高くなっています。

ゲストのレビューを見たりしてホストに宿泊の決定権のある民泊側からすれば、「なんだそうか」と思うかもしれませんが、これはとても重要です。

その理由は、仮にこの規定がなくなれば、日本のホテル・旅館はAirbnbなどの民泊サイトに登録しやすくなりますから、逆に集客目的で民泊サイトを利用するホテル・旅館業も出てくることが予想されます。そうなると、正規の許可があるホテル・旅館業は旅行サイトと民泊サイトという2つの異なるチャンネルで集客できることとなりますから、集客力が格段に上がる可能性があります。

現在、都市部のホテルの稼働率は高いものの、旅館や貸別荘などの稼働率はそうでもありません。民泊が流行っているからお客をとられてしまっているともいえますが、逆の見方をすれば、余力を残しているともいえます。こうした旅館などが、AirbnbやHomeaway、中国民泊サイトなどを利用して本格的に集客を始めると、民泊、特にワンルームや民家などを借りて運営している家主不在型の民泊と直接競合することになりますから、むしろ民泊に取って脅威ともいえます。

私は、新法が施行されれば、民泊とホテル・旅館業の区別が難しくなり、イーコールフッティングどころか、全く同じ土俵で競争することになるような気がしますので、仮に、立地条件が良くや稼働率が高く、今後も一定の集客が見込まれるのであれば、むしろ正規の旅館業法の許可を取得し「ブランド化」することを目指してみるのが、実は王道のような気がします。

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