2016.6.20に行われた「第13回民泊サービスのあり方に関する検討会」を傍聴しましたので内容を伝えします。
あり方検討会はこれで最後となり、検討会の最終結論として「民泊サービス」のあり方に関する最終報告書が取りまとめられます。今回はこの最終報告書(案)について議論が行われました。
最終報告書の内容については、基本的には前回(第12回)の内容とほぼ同様で、2016.6.2の閣議決定を踏まえてのものです。
●最終報告書全文はこちらをご覧ください
→ 「民泊サービス」の制度設計のあり方について(最終報告書案)(PDF:223KB)
あり方検討会設置の経緯と位置づけ
今回で最後となりますので、少しあり方検討会の設置の経緯からご説明しますが、検討会発足の根拠は平成27年6月30日の閣議決定「規制改革実施計画」によります。
増え続ける民泊について、公衆衛生やテロ防止の観点から一定のルールを作り上げることを目的とし、当初は28年度中に結論を出す予定でしたが、政治主導により前倒しとなり、本年度6月中(参院選前)に結論を出すこととなりました。主催は厚生労働省と観光庁の共管です。
平成27年11月27日に第1回会議が開催され、今回13回目で終結ということになりますが、この間、様々な関係者からヒアリングを受けています。
ヒアリングを受けた関係者は、ホテル・旅館業界、経済団体、仲介事業者、住宅管理会社など民泊、旅館業の両業界(民泊が旅館業の新興勢力ともいえますが)の関係者、プラットフォーマ―たちですが、それぞれいろいろな観点からさまざまな意見や提案が述べられました。
なお、あり方検討会自体、ホテル旅館業界、不動産業界、学識経験者、行政という異なる業界から選出された委員(構成員名簿(PDF:41KB))が民泊サービスについて議論するという呉越同舟の会議なのですが、最後まで、各業界の溝は埋まらないまま渋々結論に至ったという印象を受けました。
民泊サービスのあり方に関する検討会最終報告書のポイント
ポイントについては、これまで何度もお伝えしましたが以下の3点です。
なお、これまで報道などでは、「180日自体を明記しないのでは?」とも言われていましたが(閣議決定していますからそんなことはあるはずがないのですが…)、しっかり上限として明記されています。ただし法制化の中で日数が引き下げられるのか、日数のカウント方法をどうするのかということについては現段階では決まっていません。フル稼働したい不動産業会と、できるだけ稼働させたくないホテル旅館業界との溝は深く、検討会の最終報告は閣議決定のままの表現ぶりです。
また、1人当たり3.3㎡以上という要件が記載されていますが、これは簡易宿所とのバランスを図ったものでしょう。
●詳細については、前回詳しく記載していますのでこちらをご覧ください→「2016.6.10第12回民泊サービスのあり方検討会(速報)」
これら新たな論点については、新法を制定して実現していくということですが、同時に関連する旅館業法についても改正を予定しています。こちらもポイントだけ説明します。
今後のスケジュール
あり方検討会自体は、規制改革会議のように結果を答申するというようなスタイルではありません。実行上、今回の最終報告をもって、新法を所管する厚生労働省・国土交通省が立法手続きの事務作業に入ります(最終的には(内閣か議員から)国会に提出されますから、両省が法案の下地作りという意味です。)。今年度中の法案提出、来年度施行を目指しています。
なお、こうした手続法の運用には大きく分けて2パターン考えられますが、
●一つは、全国一律型で、法律により国が基準を一律に管理し、自治体にあまり裁量権のない制度です。一例としては、宅建業法、区分所有法などです。
●もう一つは、法律を制定し、運用は地方自治体の裁量(条例等)にゆだねるという制度で、旅館業法や都市計画法がこれに当たります。
民泊新法は、ある意味旅館業法から派生した法律ともいえるため、おそらく後者のタイプになると思われます。
そうなると、法律や施行令以外に、自治体の条例、規則が必要となり、自治体に法の趣旨を伝えるガイドラインやQ&Aなども作成する必要が出てきます。規制改革会議の答申に基づく閣議決定では、業者登録をインターネットでと言っていますが、このあたりの整合性をどのように取るのかが、制度設計の難しいところだと思います。
いずれにしても、来年度初頭には新法が施行ということになりそうですが、その間、民泊を取り巻く環境がどのような方向になるかは不透明です。
国は、今年4月1日に旅館業法施行令を改正し、多くの自治体も緩和に向けて動いていますから、これからは、無許可民泊に対する風当たりは徐々に強くなっていくように思えます。特に、国レベルでは既に政令(旅館業法施行令)改正により規制緩和は実施しているという見解で、自治体に基準を見直すよう指示していますから、基準が改正された自治体については、ある程度、行政指導や取り締まりなどのリスクが出で来ることが予想されます。
●これまでの規制緩和
最後に、
民泊の方向性は見えてきましたから、新法の制度で運用するのか、それとも旅館業法(簡易宿所)や特区法の許可を取ってフル稼働を目指すのか、または各制度を併用するのかを決めていかなければならなくなりそうです。最終報告書には、特区民泊についても、「実施状況の検証結果を踏まえることが必要」と記載されていますから、新法施行までのどこかの段階で見直される可能性もあるのではと思います。
いずれにしても、法が施行されるまでは、行政の動向から目が離せませんから、当事務所としては、あり方検討会が終了しても逐一、情報収集・発信に努めていきます。
●旅館業、簡易宿所の許可についてはこちらから
↓動画解説はこちらをご覧ください。