トレーラーハウスとは、家のついた車、いや、車のついた家で、つまり「家のように住むことができる車」と言えます。近年は、普通車やキャンピングカーによる車中泊が流行していますが、これらは、いわば簡易的な家で、まあ、キャンプのようなものですが、トレーラーハウスは恒常的に住むことができ、英語では、モービル・ホーム(mobile home) といいます。
形状としては、自働車でけん引できるようになっていて、トラックの荷台にコンテナではなく、家がついているようなイメージです。
キャンピングカー・トレーラーハウス違いはなに?
キャンピングカーは車と一体となっている自動車です。タイヤがついて、自走できるため、ナンバー登録が可能。➡要件を満たせば8ナンバー登録可能
一方でトレーラーハウスは、ナンバーを取得できる規格内(下記特殊車両通行許可の基準参照)であれば、ナンバーを取得でき、行動を走行できますが、大型のものは、ナンバーが取れない場合もあり、移動させる場合、通常は、特殊車両走行許可が必要になります。
トレーラーハウスは登記できるの?
建物として登記できるかという問題がありますが、登記の要件としては、以下の3つです。
- 外気分断性・・・屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること
- 定着性・・・土地に定着した建造物であること
- 用途性・・・その目的とする用途に供し得る状態にある
です。上記のうち、定着性を満たさないので、トレーラーハウスは(構造上タイヤで移動できるので)登記できないと考えられます。なお、固定してしまえば登記可能ですが、車ではなくなってしまいます。
したがって、トレーラーハウスの利点である車両として取り扱う=容易に移動できるという面を生かすため、建築物とみなされないように以下のような点に注意が必要です。
建築物に該当しない要件
トレーラーハウスを建築物に該当しないとする条件=日本建築行政会議の「車両を利用した工作物」にある建築物に該当しない条件です。
以下が、車両を利用した工作部の要件なので、これにあたらなければ、車両だという、いわば「裏読み」、反対解釈です。
建築物として取り扱うもの
❶ トレーラーハウス等が随時かっ任意に移動することに支障のある階段、ポーチ、ベランダ、柵等があるもの❷ 給排水、ガス、電気、電話、冷暖房等のための設備配線や配管等をトレーラーハウス等に接続する方式が、簡易な着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)で ないもの
❸ 規模(床面積、高さ、階数等)、形態、設置状況等から、随時かつ任意に移動できる とは認められないもの
・なお、設置時点では建築物に該当しない場合であっても、その後の改造等を通じて土地へ の定着性が認められるようになった場合については、その時点から当該トレーラーハウス 等を建築物として取り扱うことが適切である。
出典 日本建築行政会議の「車両を利用した工作物」にある建築物に該当しない条件
「随時かっ任意に移動できるとは認められないもの」の該当例は、以下のとおりである。
○車輪が取り外されているもの又は車輪は取り付けてあるがパンクしているなど走行するために十分な状態に車輪が保守されていないもの○上部構造が車輪以外のものによって地盤上に支持されていて、その支持構造体が容易 に取り外すことができないもの(支持構造体を取り外すためにはその一部を用具を使用しなければ取り外しができない場合等)。
○トレーラーハウス等の敷地内に、トレーラーハウス等を設置場所から公道まで支障なく移動することが可能な構造(勾配、幅員、路盤等)の連続した通路がないもの。
○トレーラーハウス等が適法に公道を移動できないもの。
・臨時運行許可(仮ナンバー)や特殊車両通行許可等を受けたことだけでは、「随時かつ任意に移動できるもの」との判断はできない。
出典 日本建築行政会議の「車両を利用した工作物」にある建築物に該当しない条件
以上から、
❶ | 随時かつ任意に移動できる状態 |
❷ | 土地側のライフラインとの接続が工具を使用しないで着脱できること(ガスや水道を完全に固定接続しない) |
❸ | 適法に公道を走れること |
車両扱いのメリット
- 車なので、市街化調整区域などに置くことも可能(※自治体によります)
- 基礎工事など特に不要
- 固定資産税がかからない(※自治体によります)
- 移動できるので、そのまま引っ越しができる
※なお、車両規格に収まるような大きさである必要があり、2階建などは不可です。
道路法に基づく車両の制限|以下の条件を満たさないと車両ではない
(道路法第47条1項、車両制限令第3条)
車両の諸元 | 一般的制限値(最高限度) |
---|---|
幅 | 2.5メートル |
長 さ | 12.0メートル |
高 さ | 3.8メートル |
重 さ | 総重量20.0トン |
軸重 | 10.0トン |
隣接軸重 | 18.0t:隣り合う車軸の軸距が1.8 m未満 19.0t:隣り合う車軸の軸距が1.3 m以上かつ 隣り合う車軸の軸重がいずれも9.5t 以下 20.0t:隣り合う車軸の軸距が1.8 m以上 |
輪荷重 | 5.0トン |
最小回転半径 | 12.0メートル |
ここでいう車両とは、人が乗車し、または貨物が積載されている場合にはその状態におけるものをいい、他の車両をけん引している場合にはこのけん引されている車両を含みます。(車両制限令第2条)
つまり、けん引する車を含めて、幅2.5m×高さ3.8m×長さ12mに収まらなければ、そのまま道路を走れないので、車両扱いされない=ナンバーが取れない ということになります。


この場合「特殊車両通行許可」が必要になります。
トレーラーハウスを運搬する際の法律|特殊車両通行許可
以下の基準「一般制限値」を超える場合、国土交通省地方運輸局、国道管理者等の通行許可を受ける必要があります。

トレーラーハウスを運搬する際の法律|牽引
重量が750kgを超える車両を牽引する場合は、けん引免許が必要で、いわゆる普通免許では運転できません。したがって、ごく小型のもの(キャンピングトレーラーなど)以外は、けん引免許が必要というとことです。
トレーラーハウスで宿泊事業可が可能か?
旅館業法では、
例えば、”「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業”
とあり、「施設を設け」という部分の解釈が重要となってきます。
この施設を建築基準法上の「ホテル・旅館、簡易宿所」を意味するととらえれば、自動車であるトレーラーハウスでの営業は不可となりますが、「施設」と記載しているのみであるから、建築物以外のものである「車両」も含むと解釈すれば、トレーラーハウスでも可能となりますが、これらは、許可権限を持つ自治体(都道府県または保健所設置市町村)の判断となります。
※ちなみに、タイヤを外し、土地に定着させれば(上記要件(日本建築行政協会、登記要件参照)のとおり)建築物になりますが、その場合、建築確認申請なども具備していないため、また別の問題がでできます。
なお、民泊(住宅宿泊事業)については、要件が建築基準法上の住宅である必要があるため、移動できる状態では、つまり車両扱いでは不可と考えて差し支えないでしょう。