新型コロナウイルス対策の特措法スタート|新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正!!

新型コロナウイルス対策の特措法「新型インフルエンザ等対策特別措置法」が、2020.3.13参議院本会議で採決が行われ、賛成多数で可決し、成立しました。これは既存の法律を新型コロナウイルス感染症に対応できるよう改正したものですが、

これにより、新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に備え、総理大臣が「緊急事態宣言」を行うことが可能になります。

特別措置法は同日公布され、14日から施行となります。

併せて、政府は新型コロナウイルスを、来年1月末まで特措法の対象とする政令を決定(法律の詳細は政令に委任)。

※なお、国民民主党など野党は協議段階で「●●等」の解釈=「新感染症を含む」で改正しなくとも可能と主張していましたが( そもそも、特措法自体は、民主党政権下で成立した法律で、法を制定した当事者である民主党の流れをくむ国民民主党の玉木代表自身が、「法改正不要でそのまま適用できる。」と主張しています。)、しかし、最終的には、与党案を丸呑みし「新型コロナウイルス感染症」を明記する形で改正し、可決しています(共産、れいわは反対)。

特措法改正案の骨子

改正案の骨子(概要)は以下の通りです。

つまり、新型インフルエンザ等対策特別措置法の「等」の定義を改正し、この中に「新型コロナウイルス感染症」も含めるというものです。

提出理由

閣法第46号

閣議決定日:令和2年3月10日

国会提出日:令和2年3月10日

衆議院

新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案

 新型コロナウイルス感染症の発生及びそのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えることが懸念される状況に鑑み、この法律の施行の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなし、同法に基づく措置を実施する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

内閣法制局 https://www.clb.go.jp/contents/diet_201/reason/201_law_046.html

特措法の内容

特別措置法は13日夜、公布され、14日から施行されます。また、政府は新型コロナウイルスを、来年1月末まで法律の対象とする政令を決定しました。

これにより、都道府県知事が外出の自粛、学校の休校などの要請や指示を行うことが可能になります。

特措法の構成

  • 第一章 総則(第1条-第5条)
  • 第二章 新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画等(第6条-第13条)
  • 第三章 新型インフルエンザ等の発生時における措置(第14条-第31条)
  • 第四章 新型インフルエンザ等緊急事態措置
    • 第一節 通則(第32条-第44条)
    • 第二節 まん延の防止に関する措置(第45条・第46条)
    • 第三節 医療等の提供体制の確保に関する措置(第47条-第49条)
    • 第四節 国民生活及び国民経済の安定に関する措置(第50条-第61条)
  • 第五章 財政上の措置等(第62条-第70条)
  • 第六章 雑則(第71条-第75条)
  • 第七章 罰則(第76条-第78条)
  • 附則

となっていますが、今回の法律は、既存の法律に新型コロナウイルス感染症を追加するのみで、法律の基本的な内容は変更ありません。

法律でできることは以下の通りです。

特措法のポイント

行動計画の作成|第2章関係

国、地方自治体は、行動計画を作成する(第6条~第9条参照)

発生時対応|第3章関係

  • 内閣総理大臣は政府対策本部を設置する(第15条)
  • 政府対策本部が設置されたときは、都道府県知事及び市町村長も対策本部を設置する(第22条、第34条)
  • 医療従事者等へのワクチンの先行接種が行われる(第28条)

新型インフルエンザ等緊急事態宣言|第4章関係

この章が最も重要で、総理の緊急事態宣言の内容を規定しています。その内容は、

①全国的かつ急速なまん延により、②国民の生活及び経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして③政令で定める要件に該当する事態となった場合、

内閣総理大臣は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」を行う(第32条)

これは非常に重要で、緊急事態宣言に基づき、以下の措置をとれるようになります。新型インフルエンザ等緊急事態において、以下の措置が可能です(新型コロナについては、予防接種などは技術的に難しいですが、現行の新型インフルをベースに解説します。)

外出自粛要請:催物等の制限要請や指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮する)

  • 知事は外出自粛を要請できる(第45条第1項)。
  • 罰則はないものの、多数の者が利用する学校や映画館などの施設(1000平米超)の使用制限・停止又は催物の開催の制限・停止を要請することができる(第45条第2項)
  • 正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。外出自粛や使用制限の期間は、新型インフルエンザ発生後の最初の1-2週間が目安とされている[22]

❷住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)

❸医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)

❹臨時の医療施設を開設するため➡土地・建物の強制使用が可能(第49条)。

❺緊急物資の運送の要請・指示

❻政令で定める特定物資の売渡しの要請・収用

  • 都道府県知事等➡緊急対応に必要な物資の売渡しを業者に要請
  • 不当に応じない場合は収用(取り上げることですね。)することも可能(第55条)
  • 不当に売り渡しに応じなかった業者に対し、罰則を適用可能(第76条)。

❼埋葬・火葬の特例

❽生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)

❾行政上の申請期限の延長

❿政府関係金融機関等による融資

解説:同法は、個人の自由や権利の制限、つまり、人権の侵害につながる懸念があり、日弁連等が12年3月に反対声明を出しています。一応、当時野党であった自民党の要求で緊急事態宣言を恣意的に行わないことなどを求める附帯決議が両院の内閣委員会でなされています(付帯的には特段の拘束力はありません)。

財政上の措置等|第5章関係

  • 国や都道府県による費用の負担、損失補償や損害補償等
  • 国、都道府県は、検疫のためにやむを得ず特定病院等を同意なく使用する場合や臨時の医療施設開設のため、土地等を使用する場合等による損失を補償
  • 要請や指示による医療等を行う医療関係者に対して、実費の弁償(62条)
  • 要請や指示による医療の提供を行う医療関係者が、死亡、負傷した場合など損害を補償(63条)

特措法総評|その他

以上、法律が制定され、14日施行されましたので、おそらく早い段階で緊急事態宣言が出される可能性があると思われます。

追記:2020年3月14日18時からの首相会見で、「現時点で緊急事態ではない」、「必要であれば速、実行」と発言がありました。

※実際に緊急事態宣言が発令されるまでは、このようなイメージです。

緊急事態宣言とロックダウンの流れについてはこちらを参照してください。

マスク等の転売は国民生活安定緊急措置法

※マスクの転売等に関しては、一部については、 国民生活安定緊急措置法によることとされていますので、こちらも併せてご覧ください。

マスクの不正転売を禁止する政令が閣議決定されました(3月10日)。これは、国民生活安定緊急措置法に基づくもので、3月11日に公布、15日か...

緊急事態宣言可能な他の法律

ちなみに、緊急事態については、今回の特措法以外にも既に存在しています。

緊急事態宣言可能な法律

  • 警察法 (昭和29年法律第162号)
  • 災害対策基本法( 昭和36年11月15日法律第223号 )
  • 原子力災害対策特別措置法( 平成11年12月17日法律第156号 )

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