遺言(ゆいごん、いごん)とは、故人が自らの死後のために残した最後の意思です。民法上における遺言は、遺言通りに実行させるためには、民法に定める方式に従わなければなりません(960条)。
遺言には一般的に、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類と、緊急時の「特別法式」3種の合計7種類があります。
これらの形式を守らないと、効力は認められないので、遺言の撤回、開封、執行についても厳格に規定されています。
遺言は単独行為
遺言は相手のいない単独行為です。
そして、民法は「私権の享有は、出生に始まり(3条)、代理権や賃借権に代表されるほぼすべての私権は死亡により消滅します 」が、例外として、遺言は死後に生じる権利というか行為ということとなっています。
そして、遺言という行為が可能なのは、唯一本人だけで、「代理」にはなじまない行為です。
したがって、誰かが代わりに書いたり、後見人(青年後見人、保佐人、補助人)に同意見や取消権はありません。よく裁判で争われたりしますが、認知症であったとしても原状に復している場合は認められることが多いと思います。
✍自筆証書遺言
遺言の本文、日付、氏名を自書し押印すれば完成します(968条1項)。
つまり、文字をかければ自分で作れるわけです。
ただし、遺言が発見されなかったり、隠滅されたり、書き足されたりするリスクはありますので、この点は注意が必要です。
自 書→パソコンやタイプで作ってはいけません。音声を録音してもダメです。書いてください。
日 付→きちんと平成●年×月△日などと書くのがベストです。暦日の特定の日付が特定できなければならないので、80歳の誕生日とかでもいいのですが、吉日とかにはしないよう気を付けてください。
氏 名→遺言者を特定するため、きちんと氏名を書いた方がよいでしょう。ペンネームや芸名、婚姻前の性を使ってもよいのですが、争いを避けるため、戸籍上の氏名を使うことをお勧めします。
押 印→実印でなくてもよいですが、押印(捺印)してください。
遺言の訂正→基本的に書き直してください。一応訂正の仕方は民法に規定されています。
(自筆証書遺言) 第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。 2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
✍公正証書遺言
遺言の内容を公証人に伝えて、公証人が筆記して公正証書とする。
1.自書できない場合も作れる。
2.遺言原本は公証役場に保存されるので、争いを防げる。
3.家庭裁判所で遺言書を検書(検認し開封することです)する必要がない。
ポイント
※あらかじめ下書きがあってもよい。☜実務上、行政書士や弁護士がある程度下書きします。
※公証人以外に「証人2名」が必要
→制限能力者でなければ、だれでもなれますが、遺言内容と利害関係の深い人は証人になることはできません。
遺言者の第一順位の【推定相続人】及び【受遺者】並びにそれらの者の配偶者と直系血族は証人になれません。公証人の配偶者や4親等内の親族、公証役場の書記もダメです。
しかし,それ以外の親族や他人ならば構わないので、友人・知人や職業的な法律家(弁護士や行政書士)、病院で遺言をする場合は医師や看護師になってもらうこともできます。
証人は「立会人」であり、遺言者が本人であり、精神状態が正常、自分の自由意思によって遺言が述べられたことなどを考慮して、遺言書が正しい「手続」により作成されたものであることを証明するだけで、内容や法律上の要件の有無まで責任を負うわけではありません。
※実務上は、行政書士や弁護士に遺言の作成サポートを有料で依頼し、公証人とのやりとりや立会人になってもらうケースが想定されます。ただし、2名必要です。
✍秘密証書遺言
遺言者が遺言の証書に署名・押印して、それを封じ、証書に用いた印象で封印します。
公証人1人+証人2人以上の前に封書を提出
公証人は、その証書の提出日、遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともに署名・押印する
証人3人立会いのもと、その一人に口授します。これを危篤時遺言といいます。
口授を受けたものが筆記し、遺言者と他の証人に読み聞かせて署名し印を押さなければなりません。
遺言者の署名押印は不要で、日付も要件となっていません。
ただし、遺言の日から20日以内に家裁に請求し、「確認の審判」を得なければ無効になります。
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遺言に何を書くのか?
遺言に書く内容はそれぞれですが、法律的には、次のようなことを記載すると、法律的な内容が、本人の遺志として実現されます。
●推定相続人の廃除や排除の取り消し(民法893、964条2項)・・・例えば、遺言者に対して、恒常的に暴力を振るったなどという理由で、推定相続人を相続人から排除することができます。
●相続分の指定(民法902)・・・民法で決められた相続分を遺言で、変更することができます(相続については相続のページをご覧ください)。ただし遺留分がある場合は、遺留分の権利者は遺留分減殺請求を主張することにより、遺留分を保護すること(取り戻すこと)が可能です。
●遺産の分割方法の指定(民法908)・・・金銭は〇〇、自動車は××、土地・建物は△△に相続させるなどのような指定も可。不動産などは、このように分割法を指定するとよいとは思います。
●遺贈(民法964)・・・遺言による贈与です。法定相続人以外を遺産の受取人として指定することもできます。
●特別受益の払戻免除(民法903)・・・特別受益の払戻を免除します(生前に贈与した財産を相続財産に計算上戻し入れないこと)。詳しくは、相続のページをご覧ください。
●認知(民法781条2項)・・・遺言で認知できます。
●遺言執行者の指定(民法1006条1項)・・・遺言を執行する人を指定することができます。定めない場合は、相続人が執行者の選任を申し立てることとなります。
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