第10回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会(速報)

2016年5月13日第10回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会が開催されました。

同日、新聞、テレビ報道で「民泊全面解禁」のニュース報道が行われていましたが、これは、家主がいるいわゆるホームステイ型と呼ばれる形態の民泊について、旅館業法の適用を除外又は緩和し、届出のみで営業を許可しようというものなのですが、はたして、これで「全面解禁」といえるのでしょうか、あり方検討会の資料を使ってポイントを説明していきたいと思います。※巻末に動画での解説もしていますので、こちらもご覧ください

1.1 ホームステイ型の民泊の解禁とは

新制度の概要

☝既存の住宅を利用して民泊を解禁するけれども、「一定の要件」という条件付きということが記載されています(後述)。

1.1.1 ホームステイ型民泊の定義

家主がいるタイプの民泊施設のことを言います。住宅提供者([提供者]というおかしな表現ですが、所有者や住宅を賃貸している使用権限がある人という意味だと解されます。)が、自宅に住みながら貸し出すことを定義しています。

この場合、自分の家なので、家主(ホスト)の目が行き届き、自ら管理が可能であり、かつ、住宅の使用の用途については、住宅として使用される場合と用途は同様と定義されます。

1.1.2 ホームステイ型民泊は届出制

こうしたホームステイ型の民泊に限り行政庁に届出ることにより営業を認めようというものです。

1.1.3 ホームステイ型民泊の事業者の義務 

 ・利用者名簿の備付け義務・・・・外国人の場合、旅券(パスポート)の写しの保存等
 ・最低限の衛生管理措置
 ・利用者に対する注意事項の説明
 ・住宅の見やすい場所への標識掲示
 ・当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認

が課されます。安全・衛生を確保し、登録することにより、行政がその損沿いを把握できるようになります。また、匿名性を排除することにより、行政の報告徴収や立入検査権限による「監督下」に置かれることとなります。

1.1.3 ホームステイ型民泊に対する行政の監督権

報告徴収や立入検査権限・・・権原を持つ行政庁は決まってませんが、保健所は絶対に絡んでくるとのことです。

業務停止命令・・・処分を行う行政庁は決まってませんが、保健所は絶対に絡んできます。

罰則・・・新法なのか、それとも旅館業法を適用するかはわかりませんが、旅館業法の罰則規定を強化するという動きもあります。

1.2 ホームステイ型民泊の「一定の要件」とは?

「一定の要件」とは、営業を認める代わりに、ある特定の条件を順守してくださいということです。

この要件は決まっていないため、あり方検討会で委員に議論してほしいということなのですが、少なくとも事務局(政府側)の持ち出し案は、「営業日数の制限」です。

☝日数制限を設けるべきではないという意見や人数制限という案も書かれていますが、日数制限が筆頭にきています。

2 家主不在型について

家主が不在の物件については、管理者(つまり管理業者、代行業者)を登録制にするということが提案されています。

登録制ということは、届出よりも厳しく、許可制よりも緩やかということですが、旅行業法等を考慮すると、許可に近い登録制となる可能性は否定できません。ある一定の管理者としての資格要件が必要になるのかもしれませんし、旅館業法などのように過去に業法違反したものの許可を排除する「欠格事由」なども想定されますが、現在は制度設計中とのこと。

用語の意味

●許可制・・・一般に法律で禁止された行為を特別に認めることを言います。行政庁の裁量行為といえます。飲食店や風俗営業許可、古物商許可、運転免許も許可制です。行政の裁量があるという意味では、免許も同様と考えていいと思います。

●登録・・・一般に行政庁などの名簿に登載することを言います。賃貸管理業者の登録などのように要件に合致さえすれば登録されますが、基準に適合していなければなりません。行政庁の裁量はほぼないと言っていいでしょう。ただ、旅行業や自動車登録のように、実際は要件(基準)が厳しく許可並みのもの多く登録の審査が行われます。

●届出・・・文字通り、行政に届出ることを言います。

ただし、前提条件として管理者に委託することとなっており、自ら管理する場合については、自己が「管理者」として登録が必要と記載されいます。

つまり、どちらにしても民泊をやるには、自宅の一部を貸し出す以外は、業者登録が必要になってくるようです。

そして、原案では一定の要件を超えてフル稼働するには旅館業法の許可が必要と記載されています。

2.1 日数制限と旅館業(簡易宿所の許可)

この点については、ホテル旅館業界と不動産業会で意見が食い違います。一定の要件について日数制限が妥当だとするホテル旅館業界に対して、不動産業会は日数制限不要と主張しています。

2.1.1 ホテル旅館業界の主張(要旨)

●一定の要件として「日数制限」をかけるべきで、定員も制限すべき

●新築物件は転用できないようにしたい

上記理由としては、そもそも民泊はCtoC(Consumer-to-Consumer)のビジネス、空き部屋対策であり、勤労者の所得向上の側面が強かったのだが、イコールフッティング、つまり旅館業と同じことをやるのであれば、同じ土俵の上に立つべきで、ホテル・旅館・簡易宿所が許可制であるのに対して、民泊といえども事業としてフル稼働するのであれば、簡易宿所の許可を取得して旅館業として営業すべきというものです。

極めて正論ですが。ただ、都市計画法や建築基準法などの規定(容積率など)を行政側がもう少し緩和すれば、なにも民泊に頼らずとも、旅館業で許可が取れるし、新築のホテル建設も可能であり、ホテル不足は解消されるという趣旨の発言もありました。

2.1.2 不動産業会の主張(要旨)
●日数制限をかけるべきではない

理由は初期費用の回収が遅れ、そもそもビジネスとして成り立たないというものです。空き部屋の活用を主眼に置けば、貸家も営業なので、たとえば営業面積の要件をつけたとしても、日数制限は受け入れられないうことです。

結果的には、いっけん民泊事業者にとっては都合の良い論調なのですが、イコールフッティングの立場からは疑問が残りますし、そもそも、都市計画法、建築義淳法の用途制限は、民泊に限ったものではないので、他の事業とのバランスは合理的ではないと思います。

また、そんなに簡単に民泊に参入できるのであれば、資本力のあるホテルチェーンなども簡単に新規物件の営業許可を取れるようになるともいえるので、市場が飽和状態になり過当競争が進むことも想定されますので、空家が「空ホテル」になることも懸念されます。

3 仲介事業者についての規制

「Airbnb」や日本の「とまれる」、中国の「住百家」などの民泊のマッチングサービスを行う仲介業者は登録制とし、以下の事項を義務化するとのことです。

  • 消費者の取引の安全を図る観点による取引条件の説明
  • 当該物件提供が民泊であることをホームページ上に表示
  • 行政当局(保健所、警察署、税務署等)への情報提供

無許可(届出がない)民泊、年間提供日数上限など「一定の要件」を超えた民泊を取り扱うことを禁止し、法令違反行為を行った場合の業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設けることとしています。なお、国内法人のない運営主体については、金融商品取引法に倣い「実名公表」などを視野に入れているようです(同趣旨発言あり)

4 タ―ニングポイントは6月

このように既得権を守ろうとするホテル旅館業界と空き部屋の活用として民泊に参入しようとする不動産業会の思惑や利害の対立が顕著ですが、この2者がどのようにすり合わせて行くかで、日本の民泊サービスの方向性が決まってきます。

これは本当の意味での「民泊」ではなく、事業者同士の熾烈な勢力争いの様を呈していて、自らがホストになるようなホームステイ型の民泊はむしろ蚊帳の外といった感じです。そもそも、本当の意味で、こうしたホームステイ型の民泊を代表する者がこの会議には存在していませんから仕方がないことなのでしょうが、もう少しAirbnbなどが当事者意識をもって政策提言を行えばよいとは思うのですが…

今後の方向としては、

不動産業会の意向が全面的に認められれば、つまり、「一定の要件」としての日数制限が条件として付かなければ、ほぼ全面解禁→特区民泊よりもさらに緩やかな届出制で民泊が可能となる

ホテル旅館業界の意向が認められ、日数制限が付けば、解禁は家主のビジネスとしてではなく、恩恵を受けるのは、管理者(管理業者、代行業者)のみ。フル稼働には簡易宿所の許可

ということになると思われます。

いずれにしても5月末から6月までには、一定の結論が出ると思いますので注視していく必要があると思います。

追記1

5.13発表の「観光庁の観光ビジョン 実現 プログラム 2016」にも6月目途に最終報告→法整備と記載がありますから、近日、民泊解禁の全容があきらかになります。

追記2

6.2政府は民泊に関する規制緩和について閣議決定を行いました

→詳しくは「2016.6.2  政府が民泊閣議決定!!」 で解説しています。

動画はこちら

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