震災・火災と民泊経営

地震

熊本地方の地震により、熊本城の石垣が一部崩落したニュースが流れています。数回に及び震度6を超える地震に見舞われましたが、何とが耐えています。

ご存知かどうかわかりませんが、熊本城は、現在の城にしては珍しく、江戸時代から細川氏の居城として築城され、一部外観はRC構造を取り入れて補強されているものの、築城時の原形をとどめている珍しい城です。天守がかなりダメージを受けていますが、これ以上被害が拡大しないことを願います。石垣の部分は、どの部分が江戸時代のもので、どの部分が復元かはわかりませんが、崩れた部分は、近年の復元部分とも言われていますので、江戸時代の石積みの技術の高さが伺えます。

このように、今回の地震を見ても明らかなように必ずしも、近年建てられた建物や建築物が丈夫であるかどうかは一概には言えません。確かに思い瓦屋根の木造建築物は、重心が高いため、地震の横揺れには弱いわけですが、耐震構造の建物のようにガチガチに固めて、地震のエネルギーに耐えるようにするか、それとも、免震構造のようにうまくエネルギーを受け流して揺れを吸収するのかは難しいところです。地震大国である日本に暮らす我々にとって永遠のテーマですね。

地震と火災

さて、今回の地震では、火災はあまり起きてはいないようで、これからも起きないことを祈りますが、東日本大震災級の地震であればいざ知らず、同規模であった阪神大震災においても、ものすごい大火事が起こり、20年前の震災時には神戸の街のいたるところで火の手が上がっていたのを記憶しています。特に長田区では震災直後に複数個所から火の手が上がり50万㎡が焼失したとも言われています。当時私はテレビ報道で映像を見ていましたが、現実のことと思えないような衝撃を受けたのを覚えています。

熊本は、神戸と街の密集度が違うのか、それとも消防法が強化されているのかは定かではありませんが、火災の発生が少なく、これ以上大きな被害が出ないことを願います。

火災報知器や自動火災報知設備の必要性

最近、新宿のゴールデン街の前を通る機会がありましたが、火事の現場には入ることができないよう閉鎖されていました。このような密集地で火災が起これば、大変な惨事にることは、だれが見ても明らかな街並みでした。なお、ゴールデン街の火災の原因が放火なのかどうなのかはさだかではありませんが、火災報知機が作動しなかったとも言われています。

さて、先日民泊サービスのあり方に関する検討会において、民泊の業界団体と称する団体や、ポータルサイトの提出した資料の中に、あたかも、消防法に関する設備の設置が費用がかさむため、導入困難であるから、民泊の許可の導入が進まないなどの記載が散見されますが、これは、人の命、安全を軽視した非常に危険な考え方ではないでしょうか?

民泊は、どのように理屈を後付けしても、宿泊サービスであることには変わりはありません。

いうなれば、お金をもらって、お客様の命を預かっているようなものです。したがって、消防法令への適合は、従来通り「ホテル・旅館」同様の基準が良いに決まっており、一般住宅のように適当でいいわけにはいかないと思います。

確かに、トイレや風呂、洗面台の基準などは全く意味がないと思いますが、消防法令、特に、自動火災報知設備の設置については、他の施設においても義務付けられていますから、民泊だけ特別などという考え方はあり得ないと思います。自動火災報知設備の設置費用については、私の経験から、大体1軒屋で20~30万円くらいです。それに、特に、消防設備士でなくとも設置可能なので、もっと安く抑えることもできるでしょう。費用的には、トイレを1つ増設するよりも安いかもしれません。

この程度の設備投資ができないのであれば、そもそも、事業者として民泊をやるべきではないし、言い方は悪いかもしれませんが、このようなことを平然と国に提案するべきではないと思いました。

※消防法令については以前のブログ消防法令について(特定小規模施設用自動火災報知設備のはなし)や、外部サイト民泊ナビのコラム【民泊最前線 第2回】民泊営業と消防法にも掲載しています。

申請の実務をやっていると、国や自治体の基準で現代という時代に合わない要件はたくさん思い当たります。フロントの設置要件はともかくとして、人数あたりの、トイレや風呂の個数など、衛生環境整備が進んでなかった時代(和式便所、汲取り式)の名残ともいえるべき規定です。

しかし、安全面に関する規定だけは、そうともいえず、都市化が進み、住宅が密集してきた現代であるからこそ、消防法の規定、特に自火報は必要な基準だと思います。

適法な民泊を推進するために、法の方を実態に合わせよという考えを否定するわけではありませんが、人の安全のために、最低限必要な規定は、確実にあると思います。あり方検討会にオブザーバーとして意見するような団体は、まがりなりにも、民泊の業界の意見を代弁することになるわけですから、その提案内容などに、責任をもってほしいと思い、繰り返しになりますが、経済性だけを優先させて、人の命や安全を軽んじるようなことを記載すべきではないと思います。

阪神大震災は、20年以上も昔の話しで、現在の民泊を運営する世代や外国人にとっては、記憶そのものがないとは思いますが、今回の熊本の地震やゴールデン街の火災、東日本大震災の体験を思い出し、何が真に規制緩和すべき、又は、緩和すべきではないのかを「人の命」ということを前提に、考え直していただきたいと思います。

ホストが常駐する施設ならばいざ知らず、多くの民泊は、単なる投資物件として、所有者のあずかり知らないところで運営されており、だれが運営者で、どのような人が泊まっているのわからないという問題が根底にあります。ましてや、宿泊者が日本語を理解できるかという問題もあり、旅行先として日本を選んでくれた、こうした宿泊者の安全を第一に考えてほしいものです。

ちなみに、日本は、世界でトップクラスの地震大国で、いつ何時、どこで地震災害が起こるかはわかりません。下図のように、いまだに造山運動の真っただ中にある環太平洋造山帯の中心部に位置し、それは、オリンピックの真っただ中に起こるかもしれません(ここ近年起こった大地震のほとんどが環太平洋造山帯で起こっていますから、この地域はヨーロッパやアメリカ北部、オーストラリアなどと比較するのは意味がありません)。

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